用語集

テーパリング

テーパリング(tapering)とは、中央銀行が行っている金融緩和政策、特に資産買い入れプログラム(量的緩和:Quantitative Easing, QE)を段階的に縮小することを指します。この用語は、米国連邦準備制度(FRB)をはじめとする主要な中央銀行が、経済を支えるために行ってきた大規模な資産購入を徐々に減らしていく過程で広く知られるようになりました。

テーパリングの背景

中央銀行は、景気刺激策として金利を下げたり、国債やモーゲージ証券などの資産を買い入れることで市場に大量の資金を供給する量的緩和を行います。これにより、経済活動を活発化させ、デフレや経済低迷を防ぐことが目的です。

しかし、経済が回復基調に乗り、物価の安定や経済成長が見込まれるようになると、中央銀行はこの緩和策を段階的に縮小し始めます。これがテーパリングです。テーパリングの目的は、景気回復が安定してきたと判断された場合に、金融緩和の副作用(インフレや資産バブルなど)を防ぐことです。

テーパリングのプロセス

  1. 事前のアナウンス:
    • テーパリングを開始する前に、中央銀行は市場に対してその意図をアナウンスします。これは市場参加者に心の準備をさせ、突然の変化によるショックを避けるためです。
  2. 資産購入の段階的縮小:
    • 中央銀行は、月ごとに買い入れる資産の金額を少しずつ減らしていきます。たとえば、毎月1000億ドルの資産を購入していた場合、テーパリングが始まると、これを毎月800億ドル、600億ドルと徐々に縮小します。
  3. 最終的な停止:
    • 資産購入がゼロになるまで段階的に縮小され、最終的には量的緩和が終了します。その後、中央銀行は市場からの資金供給を増やすことなく、経済の状況に応じて金利政策など他の手段を用いることになります。

テーパリングの影響

  1. 市場への影響:
    • テーパリングは金融市場に大きな影響を与える可能性があります。市場参加者が中央銀行の緩和政策の縮小を「引き締め」と捉える場合、債券利回りが上昇し、株価が下落することがあります。テーパリングの発表や実施は、しばしば「テーパー・タントラム」と呼ばれる市場の動揺を引き起こすことがあります。
  2. 金利の上昇:
    • 資産買い入れの縮小は、市場に供給される資金量の減少を意味し、金利の上昇を引き起こす可能性があります。これにより、借入コストが増加し、消費や投資が減少するリスクがあります。
  3. 為替市場への影響:
    • テーパリングが行われると、その国の通貨が強くなる傾向があります。これは、金利の上昇によってその国の通貨が魅力的になるためです。
  4. インフレ抑制:
    • テーパリングは、過度なインフレの抑制にも寄与します。緩和政策が長期間続くと、インフレ圧力が高まりすぎるリスクがあるため、テーパリングによりこれをコントロールします。

テーパリングの例

  • 2013年のFRBのテーパリング:
    • 米国では、リーマンショック後にFRBが大規模な量的緩和を実施しましたが、2013年にベン・バーナンキFRB議長がテーパリングの開始を示唆しました。このアナウンスメントは「テーパー・タントラム」と呼ばれ、株式市場や新興国市場で大きな混乱を引き起こしました。しかし、FRBは計画的かつ徐々に緩和策を縮小し、2014年には資産買い入れを終了しました。

まとめ

テーパリングは、中央銀行が景気刺激策として行ってきた金融緩和を段階的に縮小する過程を指します。市場にとっては重要なイベントであり、その影響は株式、債券、為替市場に広がる可能性があります。テーパリングが適切に行われることで、インフレを抑えつつ、経済成長を安定させることができます。しかし、タイミングや市場への伝え方によっては、金融市場に短期的な混乱を引き起こすこともあるため、慎重な対応が求められます。